クリーンウェアを選ぶ方法・クリーニングなど管理の重要性も解説
クリーンウェアは、クリーンルームで着用するための作業服です。さまざまな製品が販売されていますが、この記事では、クリーンウェアを選ぶ方法や、クリーニングなどの管理の重要性について解説しています。
クリーンウェア(防塵服)
クリーンウェアは、クリーンルームウェアや防塵服などと呼ばれる、クリーンルームで着用するための作業服です。精密機器や医薬品の製造など、幅広い分野でクリーンウェアは使用されていますが、用途に合わせて選ぶこと、そして正しく管理することが重要です。クリーンウェアを適切に使用、管理しないと、製品の製造に莫大な損害を与えてしまう可能性があります。これを防ぐため、用途に合ったタイプのクリーンウェアを選ぶ方法と、管理基準を制定し、それに基づいてクリーンウェアを管理する方法をマスターしましょう。
クリーンウェアの選び方
現在、さまざまなタイプのクリーンウェアが販売されています。選ぶ側としては迷ってしまいますが、ポイントを押さえておけば、それほど選択が難しいわけではありません。クリーンウェアを選ぶ際のポイントは3つ。素材とデザイン、そしてクリーニングのやりやすさです。
クリーンウェアの素材
クリーンウェアは、製品により素材や織り方、縫製方法が異なります。この違いにより、塵やホコリが透過、漏洩する量や、耐久性が違ってくるというわけです。クリーニングについてはこのあと触れますが、生地の素材はクリーニングへの強さにも大きく影響を及ぼします。これは消耗品であるクリーンウェアの買い替え時期にも関わるため、素材を選ぶ際は、メーカーに必ず問い合わせておきましょう。
塵やホコリを寄せつけたくないクリーンウェアの敵は静電気です。そのため、静電気防止加工は必須といってもよいでしょう。
当然、生地の厚さも考慮する必要があります。クリーンウェアの着用時は、肌が露出した部位以外でも、生地から漏洩や透過する形で汗などの物質が外に出てしまう場合があります。生地に厚さがあれば、これは防げる可能性が高くなりますが、厚すぎると作業性に影響する可能性があるので、そうかんたんに判断できるものでもありません。そのため、クリーンウェアを選ぶ際は、必ず試着して、作業性や操作性に影響があるかどうか、必ずチェックするようにしましょう。
最近は、生地の織り方や重ね方に工夫をこらしている製品も多くあるので、気になる製品については、メーカーから情報収集しておくことをおすすめします。
クリーンウェアのデザイン
クリーンウェアのデザインは、基本的にマスクやフードの有無で決まります。清浄度がそれほど必要ないクリーンルームであれば、フードのついていないクリーンウェアでも問題ない場合もあります。しかし、頭髪をそのままにして作業するわけにはいかないので、ヘアキャップは必ず着用しましょう。
フードは顔や頭を覆うため、ほかの部位よりも汚れやすいことが難点です。そのため、フードだけ洗えるよう、フードとウェアが分かれている製品も数多くあります。このようなタイプなら、クリーニングの頻度をフードとウェアで変えることが可能です。
フードとウェアが一体となったタイプもあります。こちらは通常、体の正面にファスナーが取り付けられていて、着脱がとてもかんたんです。
フードとウェアのほか、マスクが一体になっている製品もあります。このタイプは、着用している人の動きによりウェア内から空気が押し出されるポンピング発塵を一定量防ぐことが可能です。マスクも付属しているので、口や鼻周辺からの飛沫対策にも優れています。
クリーニングのやりやすさ
クリーンウェアは消耗品です。基本的には定期的にクリーニングをしながら、時期が来たら廃棄しますが、さまざまな選択肢があるので、使い捨てのものを選ぶ場合もあるでしょう。
使い捨てのクリーンウェアは、使用が1回きりなので、ある意味「最もクリーンなクリーンウェア」だといえます。使い捨てのクリーンウェアは理想的ではあるものの、これを繰り返し使用することはご法度です。使い捨ての製品を繰り返し使用すると、生地が塵やホコリの源となってしまうので、絶対にやめてください。
多くの企業にとって現実的なのは、使い捨てではなく、クリーニング可能なクリーンウェアです。クリーンウェアは製品選びももちろん重要なのですが、クリーニング業者選びも同様に重要です。クリーンウェアのクリーニングは、専門の業者でないとできません。できればクリーンウェアを使用するクリーンルームと同等か、それ以上のレベルのクリーンルームを備えた業者に依頼したいところです。
クリーンウェアを購入する際は、製品の耐久性やクリーニングの頻度などを考慮する必要があります。クリーンウェアのクリーニングは、一般的な衣類のクリーニングとは比較にならないほど、完了までに時間がかかります。
クリーンウェアの管理
ここまで、クリーンウェアの選び方の肝をご紹介してきましたが、クリーンウェアを使用するうえでもうひとつの肝となる「管理」について解説します。
管理が行き届いていなければ無意味
医療機器、精密機器などの製造現場では、塵やホコリの混入は許されません。そのために企業は高いレベルのクリーンルームを用意しているわけですが、クリーンルームがすばらしい状態に保たれていたとしても、その中で着用するクリーンウェアの取り扱いが適切に行われていないと、クリーンルームも備えているポテンシャルをすべて発揮することができません。つまり、クリーンウェアを使用する人間は、それなりのスタンダードに基づいて使用しなければならないのです。
管理責任者を置く
クリーンウェアは、適切に取り扱ってこそ効果を発揮するものなので、その管理のために責任者を置くことが望まれます。これは、日本空気清浄協会も指針として示していることであり、責任者がウェア管理の全プロセスにわたり把握することで、クリーンウェアとクリーンルームが持つポテンシャルをフルに発揮させるための指針でもあります。
管理責任者は、新品、クリーニング後にかかわらず、クリーンウェアが納品されたらサイズや数だけではなく、包装状態や品質のチェックを必ず行います。もちろん、ウェアは日々のチェックも欠かせません。不良箇所があると、そこを発端に生地がほつれるなどして、生産に大きな影響を及ぼす可能性があります。もしも不良箇所が見つかった場合は、修理、もしくは廃棄の決断をします。クリーンウェアに関しては、「もったいない」はありません。そもそも消耗品であるクリーンウェアですから、状態を細かくチェックして、不良箇所があれば適切に対応するという考え方が必要です。
クリーンウェアを着用するスタッフへの指導も忘れては行けません。責任者やスタッフの気の緩みが、製品の製造に大きなダメージを与えるかもしれないので、ウェアの着脱手順からしっかり指導する必要があります。なかなか大変なことではありますが、クリーンウェアは管理なくして正しく運用することはできません。
まとめ
クリーンウェアを選ぶ方法や、管理の方法について解説してきました。現在、クリーンウェアは、製造の現場以外でも幅広く使用されています。クリーンウェアを正しく管理することは、経験も必要とされるのでかんたんではありません。日本のハイテク産業は、クリーンウェアの正しい運用があってこそ、回転していくものなのです。